感想 ウルトラマンブレーザー 第17話「さすらいのザンギル」 - その剣の閃きは、怪獣の霊を鎮める為に -
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空色カラス
■ウルトラマンブレーザー
第17話「さすらいのザンギル」[2023年11月11日放送]
脚本:継田 淳 監督:辻本貴則
先週の特別総集編②「ブレーザー電脳絵巻」。本編に登場しないキャラクターたちが、彼らの視点で『ウルトラマンブレーザー』について語るという点では、前回の特別総集編①に近しいものがありました。しかし、回想シーン以外、全編アニメというのは新鮮でした。『ブレーザー』本編の内容がだいぶ対象年齢上げてる感あるので、デフォルメがかったキャラクターで対象年齢を元の位置(?)に戻そうしてる感もよかったと思います。アレをソフビでやろうとすると、スパークドールズ劇場になるんだなあ。とか思いつつ。
あと、『ばっちしV』みたいな本編を編集して見どころをだけを押さえたビデオとか、『ウルトラ怪獣大百科』みたいな怪獣の能力を紹介する短編番組みたいな、そういう感じのノリでの総集編ということもあってか、なんか懐かしさもあったり。あれ、そうすると、なんか思ったより対象年齢が下がってなくて、実は僕ら向きな……?でもないか。
でも、PALを彷彿とさせるパーフェクト・アナライズ・ガジェットこと、電脳生物のパグ(PAG)くんと、大地の下からやってきた怪獣モグージョンをデフォルメ化したもぐ~じょんちゃんと、深海の底からやってきた怪獣ゲードスをデフォルメ化したげ~どすくん。あと、聞き覚えのあるSEとかもあって、妙に『ウルトラマンガイア』を彷彿とさせる要素がたっぷりあった訳ですが。これは一体。
とはいえ、もぐ~じょんちゃんと、げ~どすくん。ソフビとか、立体物的なグッズが欲しくなるレベルで、可愛かったのがズルいですね。特にもぐ~じょんちゃんは、見た目と声の可愛さとは裏腹に、「幻見せて食べちゃうぞー!」とか言ってることがだいぶえげつなかったりするのが、逆にクセになるというか(笑
でも、子供が観てる番組で、性格がどうとかとか、友達がいなさそうとか、ひそひそ話すのはやめてあげような(血涙 あと、お友達との喧嘩もね!というか、げ~どすくんがブレーザーと戦った記憶持ってただけに、彼らは劇中の怪獣と同一個体で……って考えると、モグージョンは女の子!?雌の個体なんですかね。
そうすると、雄の個体は、雌の個体とは姿が違うのか、それとも似た姿をしているのか。非常に気になってきました。シーゴラス、シーモンス夫婦みたいに、全然違う姿してたらいいなあと思う反面、つがいでそっくりでも、それはそれいいのかなあ、とか。
そういえば、モグージョン。ウルトラマンデッカーの第6話「地底怪獣現わる!現わる!」の回に、もし出てきてたら、相当ヤバいことになってたんだろうなって。もはや餌の宝庫じゃないですか。モグージョン的に。グドンとモグージョンはどっちが強いのかとか。なんかモグージョンと別の地底怪獣が戦う回観たいなあって。辻本監督回で。辻本監督回で。(大事なことなので、2回言いました)

そして、こちらが我が家の化けモグラちゃんと、生臭深海魚くん。とても可愛いですね。モグージョンちゃんは、手の甲はしっかり塗ってあるのに、せっかくの手のひらは無塗装の成型色なので、塗ってあげるといいかもですね。あと、上半身と下半身のつなぎ目のところとか。あと、モグージョンちゃんは、『地底怪獣現わる!現わる!』とも撮って遊んでたんですが、それはまた追々。
本作における最後の辻本監督回だそうで。もっと辻本監督回見たい!と思う一方で、全25話(だよね?)中、5回監督として参加されているので、これ以上参加されてしまうと、他の監督回が観られなくなっちゃう!というジレンマもありつつ。でも、やっぱりもっと観たい……。
『ウルトラマンタイガ』や、『ウルトラマントリガー』、『ウルトラマンデッカー』でも、最終章一歩手前のところで、終盤に向けて作品を盛り上げてくれる監督という印象があったので、余計になんかそういう気持ちになります。
本作でも、登場人物の掘り下げ回としても面白いが、怪獣がかなり魅力的に描かれていた第4~6話。辻本監督の第2期愛が炸裂しまくってる第16話。そして、今回の第17話。どれもホント魅力的で。
今回は、宇宙侍ザンギルというキャラクターが登場すると聴いたときから、絶対に辻本監督回であってほしい!とメチャクチャ願ってたので、本当に辻本監督回で最高にウッキウキでした。剣戟なら、辻本監督でしょう。みたいな。みんな大好き『ウルトラマントリガー』第22話「ラストゲーム」の、巨人同士のチャンバラとかあったからこそ、余計にそういうイメージがあるのかな、というか。
それにしても、プレミア発表会で、その姿がお披露目されたときは、コイツ絶対に、ザラブ星人みたいな狡猾な星人だぞ!と思ってた彼が、まさか怪獣の霊を鎮魂するために、宇宙を駆けめぐる侍ザンギルだったとは。正直驚きでした。
どうも、宇宙から来た侍となると、宇宙剣豪ザムシャーのイメージが強いので、甲冑をつけてるイメージが先行してしまうところなのですが。抜身の刀をそのままモチーフにしたような鋭い頭の星人が宇宙侍として登場するというのは、個人的には結構意外でした。その上で、人間態が唐橋充アニキと来た。唐橋さんって、もう佇まいが侍なので(?)、その人間態があまりに様になっているというか。
それであって、侍戦隊シンケンジャーの腑破十臓みたいな強き者と命がけで斬り結ぶ快楽に溺れるような危険人物ではなく、救われぬ怪獣の魂を鎮めると共に、自らの魂の救済を求めてさすらう既に死した侍という独特な設定も面白かったです。
SF寄りな『ブレーザー』で、怨念だの、亡霊だののお話が出てきたときにはちょっと面食らいましたが。『ウルトラマン』という作品においては、初期からして倒した怪獣を弔うとか、供養するという概念があるので、それがあればこそのキャラクターですよね。
そんな使命を帯びてやってきたザンギルが、逃した怨霊を退治すべく、恥を忍んでゲント隊長と、ウルトラマンブレーザーに、協力を仰ぎに来るというシチュエーションがもはやメチャクチャ面白いんですが。それの話をするのが、昔からある古めかしい喫茶店で。なおかつ、ザンギルは地球のコーヒーが大好きでってのがたまらなく面白かったです。
現代に生きるコーヒー好きの侍とか、それってなんていう藤岡弘、氏でござるか。 地球の日本の侍文化にかぶれるがゆえに、ござる口調というのも、いささか腹筋に悪かったです。「変なのか?」とザンギルに問われて、「いや、まあ……」と言葉を濁すゲント隊長も。ゲント隊長とザンギルの会話劇が中心で、SKaRDメンバーがあまり登場しないお話というのも、本作としては異色な感じでなかなか。
それにしても、ザンギルが逃がすほどの怨霊って一体?と思ったら、まさかのニジカガチとは。僕の「虹を見た」の解釈からすると、一番怨霊として現れてはいけないというか、現れてほしくな怪獣なんですが。
その一方で、僕のニジカガチに対する解釈である、”神”という高次元の存在が、人の強き情念によって、”怪獣”に貶められた存在って解釈を適用すると、ニジカガチの神聖なる部分はブレーザーに倒されて天に還ったが、貶められて穢れた部分は、怨霊として残っていてもおかしくはないみたいな。
それでいて、生と死の狭間に存在する曖昧な存在であるから、実体ある姿と、実体なき姿を行き来できるというところは、高次元の存在らしく、非常に厄介というところが、解釈一致みたいところがあって嬉しくもあり。あと、人間の文化を洗い流すにしては、住宅地は襲っても、あまり市街地を襲撃しなかった怪獣なだけに、ビル街、高速道路を蹂躙するニジカガチという姿が観られたのは非常に嬉しかったです。
ザンギルだけでも、新たな武器を得たブレーザーだけでも、倒すことは容易ならざる相手として描かれてることもあり、ニジカガチの格を一切落とすことなく、更に厄介さを増した怪獣として描いてきたのは、拍手しかないですよね。クリスタルが破壊されてないニジカガチだったら、レインボー光輪さえこうなってたのか……みたいな。

雷は斬れても、霊体は斬れないチルソナイトソード。急に霊体化されて、刃をすり抜けられてしまい、喉元を刺されそうになったところをザンギルに救われるわけですが。チルソナイトソードに問題があると思ったのか、剣の刀身をコンコン叩いて確かめるブレーザーの仕草があまりに面白くて。
そのあと、刀身に、ザンギルの霊的なエネルギーを注いでもらって霊体になっても刃がすり抜けなくなるようになったら、飛び跳ねて喜ぶ様が、本当に宇宙の未開人という感じで笑いを抑えきれませんでした。
そこからの、ニジカガチの新技披露も相当アガリましたが、チルソナイトソードで上空に打ち上げたニジカガチに、ザンギルが先手で突撃。更に、ブレーザーのオーバーロード雷鳴斬で、天空で真っ二つは相当にかっこいい演出でした。
オーバーロード雷鳴斬、まだ武居監督しか演出してないから、別の監督の演出も観たい!って思ってたので、ここで辻本演出で観られたのは本当にご褒美でした。お陰で、もっと辻本演出に飢える羽目になるわけですが。もっとかっこいい辻本監督回の『ブレーザー』が見たいよぉぉぉ。
天空で真っ二つになったのに、怨霊だから死んでおらず、ザンギルを乗っ取って新しい肉体を得るニジカガチが怖すぎて、チビるかと思いました。ザンギルの持ってる結晶。霊石?の力を吸い取って新たな実体を得るに飽き足らず、ザンギルまで乗っ取ろうとは。いくら怨霊とはいえ、やりたい放題がすぎるぞ。ニジカガチよ。
何も知らず、「やったな!」みたいな態度で近づいていって急にザンギルにど突かれて慌てるブレーザーが、可愛すぎて。あまりの急のことであるのに、ザンギルそのものは味方として認識しているからか、チルソナイトソードをザンギルの剣を受けるだけに使い、自ら振るおうとしないところは、命を大事にするブレーザーらしくもあり、ゲント隊長らしくもあったなって。
しかし、さっきまでニジカガチを相手に共闘してたと思ってたブレーザーと謎の宇宙人が、急に戦いだしたら困惑しますよね。「急に戦い出した!?もう、どうなってんねん!」と愚痴るヤスノブ隊員の気持ち、強くよく分かります。アースガロンの援護が入りだす前後辺りから、ブレーザーも自らの命の危険を感じてか、チルソナイトソードを振るうようになるのですが、峰で撃ってるのが細かいです。
テルアキ副隊長の支持のもと、アースガロンが加勢に加わるのですが、一切歯が立たず。それどころかザンギル(ニジカガチ?)は、道路に剣の切っ先を擦らせて、飛び散る火花で刀身の発火させて、炎をまとう斬撃でアースガロンを撃退してしまいます。怨霊になってからのニジカガチ。凶暴性が増した感じがありますね。
仲間の危機を前に、イナズマスラッシュを発動させるブレーザー。でも、ゲバルガ戦の殺傷力高めの三連撃ではなく、一撃だったのを思うと、やはり相手がザンギルだから加減している感じでしょうか。それとも、ザンギルが三連撃すべて一撃で落としたのか!?ブレーザーが本気出せない中、ザンギルは手加減なし。ブレーザーのザンギルの剣が直撃したときの効果音が非常に生々しく、ちょっと怖かったです。
斬られた反動で後ろに後ずさるも、そこから構えを取り直し、互いに互いに向けて走り出すブレーザーとザンギル。ザンギルの剣を潜って回避し、それと同時にチルソナイトソードを返して、がら空きになったザンギルの中段に峰打ちを叩き込むブレーザー!最近、剣を手に入れたばかりのブレーザーの芸当とも思えないものの、これはゲント隊長の技なのか?
そういえば、ザンギルの口調についての物言いの際に、「時代劇は好きだけど……」と漏らしてたので、時代劇からの見様見真似の一撃だったのかもですが、ぶつけ本番でこれが出来てしまうとしたら、凄いんじゃないかと。
峰打ちを叩き込まれ、仮死状態になったザンギルから、逃げ出すように体から抜け出すニジカガチの怨霊。そのまま実体化するかと思いきや、ブレーザーと、仮死状態から目覚めたザンギルの剣を受け、大爆発。ニジカガチの怨霊は退治されました、とさ。お騒がせな怨霊も、こうなってしまうと呆気ないですね。今度はちゃんと還れるとよいのですが。
しかし、地球の自然のために、いろいろなものを犠牲にして目覚めさせたニジカガチが怨霊になって街を襲ったとか、自分の過ちを知った横峯教授が、今回の一件を知ったらどうなるんだろうか。ちょっと気になります。
ブレーザーに斬られたのに、突然目覚めだしたザンギルに驚くヤスノブ隊員に対し、斬ったのではなく、刃の背の部分で打つ峰打ちを行って仮死状態にしたことを教えるアーくん。アースガロンから接続できる防衛隊のクラウド内の文化アーカイブに、時代劇が入ってるとか、防衛隊にもなかなかの趣味人がいらっしゃるようだ。でなければ、防衛隊のクラウドに時代劇が入ってるとは思えないもの。でも、文化アーカイブ……。怪獣の調査とかに使われるんでしょうか?
それにしても、峰打ちなんて知ってるアーくんに、「すごいよアーくん」とデレデレなヤスノブ隊員。最初のお喋りはエミ隊員に取られちゃったけど、なんかかんだでアーくんとやりとりできて、よかったね。
そして、戦いのあとは先程の喫茶店。108体の成仏できぬ怨霊を鎮める使命を終えたザンギル。「これからどうする?宇宙に変えるのか?」とゲント隊長が尋ねると、驚く言葉が帰ってきた。「拙者にこれからは……ない!」 ザンギルもまた、彼が鎮めてきた怪獣の怨霊同様に、彷徨う魂であり、例の達人から貰った霊石のお陰で、実体を保っていたとのこと。
元々ザンギルも、強き者を倒すことに悦びを得る快楽で人斬りをするタイプだったみたいだが、多分どこかの星で強き者との戦いの果てに死んだんでしょうね。それも、未練を残して。死して尚も、怪獣墓場で戦い、その戦いの中で、剣の達人と斬り結んだ結果敗北。そして、剣の達人に託された使命によって、僅かながら再びの命を得て、鎮魂の旅に出たといった感じなのかな、と。そして、108体倒したところで、その旅も終わりを告げると……
「思えば、この長い年月、常に独りじゃった……。が、最後にお主たちと共に戦えたこと、誇りに思う」と、告げるザンギルに対し、「俺はゲント。ヒルマ ゲントだ。彼は、ウルトラマンブレーザー」と、穏やかなながらもどこか寂しそうに伝えるゲント隊長。防衛隊所属の人間として、素性の分からない宇宙人に名乗ることは出来ないとして、名乗ることを断った先程とは違い、あの世に還る彼の誇りに応えたがゆえの名乗りなのでしょうね。
ゲント隊長が自分の胸に手を当て、「彼は、ウルトラマンブレーザー」と伝えるところ。自分の中にいる何かに不安を感じていたあの頃と違い、穏やかな表情でそれを伝えるのが、ゲントとブレーザーとの関係もあの頃と変わってきているのが見て取れていいですね。
「ありがとう、ゲント殿。ブレーザー殿」 最後に彼らに礼の言葉を伝えると、光となって消えるザンギル。そんなザンギルに、名残を感じてか、「コーヒーがまだだぞ」とゲント隊長が伝えると、「それだけが唯一、心残りじゃのう……」と、心寂しくもどこか穏やかな表情で消えていった。
それにしても、「コーヒーがまだだぞ」って台詞。レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』で有名な「ギムレットには早すぎるね」に通ずる名文句ですよね。ゲント隊長が、共に戦ったザンギルとの別れを惜しむにあたって、こんなにも趣があって、苦味のある台詞が出てこようとは。コーヒーを飲み終えるひとときだけでも、共に過ごせたらよかったのに……。別れというのはいつも唐突なものです。

そして、コーヒーを持ってきた喫茶店の女性主人が、「あら、お連れ様は?」と尋ねると、ゲント隊長は「彼は、先にかえりました」と寂しそうな顔で伝える。困ってしまう女主人だったが、そんな彼女に、「大丈夫です。いただきます」と伝え、テーブルに二人分のコーヒーと、サービスのコーヒーゼリーを置いてもらうことに。二人分、ゲント隊長の席に寄せるのではなく、ザンギルの席と、ゲント隊長の席にひとつずつ、置かれるところが非常に趣が深いです……。あと、テーブルに力を失った霊石だけ残ってるのがなんとも。
ラストカットは、彼が好きだったコーヒーをもって、ささやかに献杯するゲント隊長。戦士として、誇り高き侍への鎮魂。宇宙の規模で考えたら、星が瞬く間の出来事なんでしょうけれども、そんなささやかな時の間でも、2人の間に確かな友情があったことを感じさせます。
それにしても、あの女性主人。ずっと懐かしさみたいなものを感じていたわけですが、『帰ってきたウルトラマン』のテロチルス回の前後編で、ヒロインを演じておられた服部妙子様だったとは。ちなみに、『ウルトラマンオーブ』第21話「青いリボンの少女」で、マーヤを保護した老夫婦の婦人役でも出演されておりましたね。ああいう優しい雰囲気の女性主人のいる純喫茶行ってみたいですね。最近、そういうところなかなか無いけれど。
それはそれとして、辻本監督本当にお疲れ様でした!次回作(あるのかな?)でも、熱くて、キレがよくて、シビれる演出、頼みます!
モグージョンに続く、辻本監督デザインの怪獣・宇宙人の第2弾。あれだけ巧みな演出も出来て、尚且つ宇宙人のデザインとかも出来ちゃうってホント多彩ですよね。宇宙侍という二つ名から思いついて、そこからイメージを膨らませていったようですが。敢えて侍感あるデザインではなく、日本刀、刀剣の方をモチーフとしてデザインされているのが非常に面白いです。侍感あるヤツは、宇宙剣豪ザムシャーがホント完成形というか、あれ以上の宇宙の侍作るの難しくない?みたいなところありますから、発想の勝利ですよね。
最初デザイン見たとき絶対悪い宇宙人だよ!それも、リフレクト星人みたいな慇懃無礼な口調で喋るヤツ!だと思ってたんで、侍ゆえに礼儀を重んじる、ちょっと堅苦しい感じのキャラクターで出てきたときにはだいぶ驚きました。名の由来は、侍だけに散切り頭かなあとか思ったんですが、ザンギルの本態にせよ、人間態にせよ、散切り頭ではないので、”斬”と”切る”でザンギルなんでしょうね。レッツ武士道!斬って候!
そして、そんなザンギルの人間態を演じるのは我らが、唐橋充さん。仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン。3大特撮シリーズ出演を制覇されている俳優さんでは御座いますが、その3大特撮すべてで侍役として出演されているのは、唐橋さんのみという。というか、3大特撮すべてで侍役を演じてるって一体?と思わないでもなくですが。でも、凄い偉業ですよね。3大特撮すべてでヒーローになる以上に、難易度が高そうです。
地球の文化を学び、日本の侍文化に惚れ込んだ侍かぶれというか、ちょっとズレてる侍感は、過去に唐橋さんが演じたどの侍とも違っててよかったと思います。あと、敢えて日本茶ではなく、コーヒーが好物というところもズレててよかったです。「おいしくなーれ」とか、どこで覚えた……
宇宙侍の姿にならず、人間体のままでも手を剣に変えて振るうことができるだけでなく、空を飛んだりも可能。更には、ゲント隊長を空に投げ飛ばすほどの怪力も披露。その怪力があれば、ゲント隊長を担いで飛ぶことも出来ただろうに、敢えて助太刀を求めた相手を投げ飛ばすとはだいぶ無茶苦茶な男である。空中を舞うゲント隊長がSKaRDに、アースガロンを出撃させろと指示するところだいぶ腹筋に悪かったです。でも、よくあの状態から怪我一つなく着地できたもので。
かつての(生前の?)ザンギルは、命知らずで、強敵を倒すことに悦びを感じる性格だったとのことで、それこそ一歩間違えれば、かつて唐橋さんが『侍戦隊シンケンジャー』で演じた腑破十臓みたいな外道に堕ちていた可能性もあったんでしょうね。それこそ、強き者にこだわらず、人を斬ることに快楽を感じるタイプだったら、『ウルトラマンレオ』の序盤に登場する人殺しだけを目的として街に蔓延る通り魔宇宙人らみたいになっていたかも。それも手を剣に変えて戦うスタイルといい、ツルク星人みたいになっていた可能性もありますね。剣の使い手でも、そこまで堕ちるタイプではなかったのが、救いか。

そんな彼を打ちのめし、彼に使命を与えた謎の剣の達人。どう見ても、宇宙剣豪ザムシャーなわけですが、首から下しか映ってないため、本当にザムシャーだったかは分かりません。ザムシャーも1体だけでなく、別個体いるしね。
だけど、2人のウルトラマンとの戦いを経て、”守る”ことの意味を理解して、強敵の前に果てた彼が、死後の世界で迷える魂に使命を与えて救済する”導きの人”になっていたら、いいなあとか思うわけですが。怪獣墓場なら、スペースを超越していてもなんら不思議ではない場所ですし。
今回のサブタイトルである、「さすらいのザンギル」というサブタイトルは、『ウルトラマンメビウス』のサブタイトル同様に、「◯◯の◯◯」というかたちにもなってますし、本当にかつてのザムシャーのその後の話だったらいいなあ、と。完全にオタクの妄想の域を出ないヤツですが。
実体の攻撃をすり抜ける怪獣の怨霊に対し、彼の攻撃が効いていたのは彼の自身も彷徨える魂だったからなのか、剣の達人に託された霊石の効果だったかはさだかではありません。彼の剣だけが、彷徨える魂を浄化できるがため、浄化する力を剣同士打ち合うことで分け当たることができるというのもかっこよかったです。剣をコンコンやってるブレーザーに、マジに斬り掛かってきたときには、「ヒエッ!?」と思いましたが。これであらゆるものを貫くチルソナイトの刃が、霊的なものまで斬れるようになったのが頼もしいですね。
108体の彷徨える魂を鎮める前に、霊石の力が切れていたら彼もどうなっていたのか。それは分かりませんが、明らかに霊石の力が弱まっているであろう描写があったので、霊石が完全に力を失う前に、108体の魂を鎮められたのは本当によかったと思います。とはいえ、1杯のコーヒーを飲み終える時間くらいは与えてあげてほしかったですね。

帰ってきたニジカガチ。まさかニジカガチほどの怪獣が再登場するとは夢にも思いませんでしたが、元より高次元の存在というか、霊的な存在だったものが、人間の強い情念や、感情によって召喚された結果、”怪獣”に貶められた存在だと思っているので、こういう登場もありなのかなって。
神性な部分は天に還り、虹となったが、穢れた部分は、ある種の残留思念として、すべてを奪い去る強い怒りを抱いたまま地上に残っていて、それをザンギルが鎮めようとしたものの、彼の持つ霊石の力を吸って、新たな肉体を得るに至ったみたいな。
横峯教授のことを思うと、あまり再登場はしてほしくない怪獣ではあったんですが、今回のお話として、ブレーザーとザンギルの2人がかりで挑まなければならないほどの強敵にして、この世のすべてを飲み込まんとするおぞましい念の強さを持つ怪獣ともなれば、相当の怪獣の念でなければならないと思うと、別次元の強さを誇ったニジカガチ以外に適任がいないんですよね。それでいて、剣を携えているがゆえに、侍との斬り合いも可能。ともなれば、これ以上ない人選というか。
生前のニジカガチはあまり尻尾の剣を使ってこなかったので、今回剣を多用してきたのは嬉しかった反面、あまり虹光線を使わなくなったのは、神性な部分が抜け落ちているからでしょうか。攻撃パターンもだいぶ変わってましたし。今回は出現以降、鎧も開いたままでしたしね。

やはりニジカガチは、嵐渦巻く自然の中を歩く姿のほうが似合う訳ですが、ビル街を襲撃し、高速道路を寸断させるという人の文明を破壊する様もなかなか。建設業の辻本組のトラックが巻き込まれていたのは可哀想でしたが。ゲント隊長のよき判断のお陰で、道路から落ちる寸前の本当のギリギリところを救われて本当によかったです。「あ、ウルトラマン……」という運転手の助かったときのちょっとホッとしたような声といい、「ありがとう!」と大声で言って去っていく様といい、ヒーローによって人が救われる描写はほっとしますね。あの運転手、もしかして辻本監督?

それはそれとして、額のクリスタルが無事ということもあってか、レインボー光輪を止める手段が今回はあるため、いきなりレインボー光輪を虹光線で打ち砕いていたのが衝撃でした。「レインボー光輪を克服してる!?」と、弱点だったスペシウム光線を克服して、スペルゲン反射光で撃ち返してくるバルタン星人を初めて見たとの気分でした。
とはいえ、あのときにはなかった武器がブレーザーにもあるので、チルソナイトソードによるオーバーロード雷鳴斬で再度真っ二つにされる様は痛快でした。やはりニジカガチは真っ二つにされる宿命か……なんて思ってたら、怨霊だけにまだ倒されておらず、ザンギルを乗っ取って、ブレーザーや、アースガロンに刃を向けてきたのは非常に厄介でした。そのあと、ブレーザーとザンギルの連携を持って倒されましたが。
それにしても、怨霊となったニジカガチの件で、テルアキ副隊長に真理を説かれ、自分が間違っていることを思い知った横峯教授が嘆いてないといいのですが。
地下より突き出た異形・汚染獣イルーゴ。その口から吐き出されたガスが、街や人を蝕んでゆく。司令部からイルーゴの調査を止められ、待機を命じられたSKaRD。エミはサード・ウェイブの可能性があると考え、第66実験施設とともに独自に調査を進める。一方、防衛隊は自走レーザー砲でイルーゴを切断する作戦に出る。
次回、ウルトラマンブレーザー 第18話「そびえ立つ恐怖」。汚染獣イルーゴ。上顎にも、下顎にも目があって、口の中に、また口がある。この異形が、とても地球産怪獣だとは思えないので、やはり宇宙怪獣だと思うのですが。地下から突き出てる部分だけがすべてではない気がするだけに、まだ下に本体があったりするんでしょうか。ちょっと怖いです。
©円谷プロ
©ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

第17話「さすらいのザンギル」[2023年11月11日放送]
脚本:継田 淳 監督:辻本貴則
先週の特別総集編②「ブレーザー電脳絵巻」。本編に登場しないキャラクターたちが、彼らの視点で『ウルトラマンブレーザー』について語るという点では、前回の特別総集編①に近しいものがありました。しかし、回想シーン以外、全編アニメというのは新鮮でした。『ブレーザー』本編の内容がだいぶ対象年齢上げてる感あるので、デフォルメがかったキャラクターで対象年齢を元の位置(?)に戻そうしてる感もよかったと思います。アレをソフビでやろうとすると、スパークドールズ劇場になるんだなあ。とか思いつつ。
あと、『ばっちしV』みたいな本編を編集して見どころをだけを押さえたビデオとか、『ウルトラ怪獣大百科』みたいな怪獣の能力を紹介する短編番組みたいな、そういう感じのノリでの総集編ということもあってか、なんか懐かしさもあったり。あれ、そうすると、なんか思ったより対象年齢が下がってなくて、実は僕ら向きな……?でもないか。
なんて可愛いんだ…
— 蕨野友也 (@TomoyaWarabino) November 5, 2023
(何故各怪獣の紹介をするのか俺にはわかる。総集編であり、復習もしつつ、「重要なポイント」もしっかりと抑える。物語も後半戦になり、次週ではザンギルというさすらいの…一体何者だ…喫茶店?での会話に耳を傾けてほしい)#ウルトラマンブレーザー pic.twitter.com/xRjPWSE3IK
でも、PALを彷彿とさせるパーフェクト・アナライズ・ガジェットこと、電脳生物のパグ(PAG)くんと、大地の下からやってきた怪獣モグージョンをデフォルメ化したもぐ~じょんちゃんと、深海の底からやってきた怪獣ゲードスをデフォルメ化したげ~どすくん。あと、聞き覚えのあるSEとかもあって、妙に『ウルトラマンガイア』を彷彿とさせる要素がたっぷりあった訳ですが。これは一体。
とはいえ、もぐ~じょんちゃんと、げ~どすくん。ソフビとか、立体物的なグッズが欲しくなるレベルで、可愛かったのがズルいですね。特にもぐ~じょんちゃんは、見た目と声の可愛さとは裏腹に、「幻見せて食べちゃうぞー!」とか言ってることがだいぶえげつなかったりするのが、逆にクセになるというか(笑
でも、子供が観てる番組で、性格がどうとかとか、友達がいなさそうとか、ひそひそ話すのはやめてあげような(血涙 あと、お友達との喧嘩もね!というか、げ~どすくんがブレーザーと戦った記憶持ってただけに、彼らは劇中の怪獣と同一個体で……って考えると、モグージョンは女の子!?雌の個体なんですかね。
そうすると、雄の個体は、雌の個体とは姿が違うのか、それとも似た姿をしているのか。非常に気になってきました。シーゴラス、シーモンス夫婦みたいに、全然違う姿してたらいいなあと思う反面、つがいでそっくりでも、それはそれいいのかなあ、とか。
そういえば、モグージョン。ウルトラマンデッカーの第6話「地底怪獣現わる!現わる!」の回に、もし出てきてたら、相当ヤバいことになってたんだろうなって。もはや餌の宝庫じゃないですか。モグージョン的に。グドンとモグージョンはどっちが強いのかとか。なんかモグージョンと別の地底怪獣が戦う回観たいなあって。辻本監督回で。辻本監督回で。(大事なことなので、2回言いました)

そして、こちらが我が家の化けモグラちゃんと、生臭深海魚くん。とても可愛いですね。モグージョンちゃんは、手の甲はしっかり塗ってあるのに、せっかくの手のひらは無塗装の成型色なので、塗ってあげるといいかもですね。あと、上半身と下半身のつなぎ目のところとか。あと、モグージョンちゃんは、『地底怪獣現わる!現わる!』とも撮って遊んでたんですが、それはまた追々。
■それは、戦いに生きた男の鎮魂歌!剣戟アクションが冴え、ほろ苦いドラマが胸を刺す珈琲のような第18話

本作における最後の辻本監督回だそうで。もっと辻本監督回見たい!と思う一方で、全25話(だよね?)中、5回監督として参加されているので、これ以上参加されてしまうと、他の監督回が観られなくなっちゃう!というジレンマもありつつ。でも、やっぱりもっと観たい……。
『ウルトラマンタイガ』や、『ウルトラマントリガー』、『ウルトラマンデッカー』でも、最終章一歩手前のところで、終盤に向けて作品を盛り上げてくれる監督という印象があったので、余計になんかそういう気持ちになります。
本作でも、登場人物の掘り下げ回としても面白いが、怪獣がかなり魅力的に描かれていた第4~6話。辻本監督の第2期愛が炸裂しまくってる第16話。そして、今回の第17話。どれもホント魅力的で。
今回は、宇宙侍ザンギルというキャラクターが登場すると聴いたときから、絶対に辻本監督回であってほしい!とメチャクチャ願ってたので、本当に辻本監督回で最高にウッキウキでした。剣戟なら、辻本監督でしょう。みたいな。みんな大好き『ウルトラマントリガー』第22話「ラストゲーム」の、巨人同士のチャンバラとかあったからこそ、余計にそういうイメージがあるのかな、というか。

それにしても、プレミア発表会で、その姿がお披露目されたときは、コイツ絶対に、ザラブ星人みたいな狡猾な星人だぞ!と思ってた彼が、まさか怪獣の霊を鎮魂するために、宇宙を駆けめぐる侍ザンギルだったとは。正直驚きでした。
どうも、宇宙から来た侍となると、宇宙剣豪ザムシャーのイメージが強いので、甲冑をつけてるイメージが先行してしまうところなのですが。抜身の刀をそのままモチーフにしたような鋭い頭の星人が宇宙侍として登場するというのは、個人的には結構意外でした。その上で、人間態が唐橋充アニキと来た。唐橋さんって、もう佇まいが侍なので(?)、その人間態があまりに様になっているというか。
それであって、侍戦隊シンケンジャーの腑破十臓みたいな強き者と命がけで斬り結ぶ快楽に溺れるような危険人物ではなく、救われぬ怪獣の魂を鎮めると共に、自らの魂の救済を求めてさすらう既に死した侍という独特な設定も面白かったです。
SF寄りな『ブレーザー』で、怨念だの、亡霊だののお話が出てきたときにはちょっと面食らいましたが。『ウルトラマン』という作品においては、初期からして倒した怪獣を弔うとか、供養するという概念があるので、それがあればこそのキャラクターですよね。

そんな使命を帯びてやってきたザンギルが、逃した怨霊を退治すべく、恥を忍んでゲント隊長と、ウルトラマンブレーザーに、協力を仰ぎに来るというシチュエーションがもはやメチャクチャ面白いんですが。それの話をするのが、昔からある古めかしい喫茶店で。なおかつ、ザンギルは地球のコーヒーが大好きでってのがたまらなく面白かったです。

それにしても、ザンギルが逃がすほどの怨霊って一体?と思ったら、まさかのニジカガチとは。僕の「虹を見た」の解釈からすると、一番怨霊として現れてはいけないというか、現れてほしくな怪獣なんですが。
その一方で、僕のニジカガチに対する解釈である、”神”という高次元の存在が、人の強き情念によって、”怪獣”に貶められた存在って解釈を適用すると、ニジカガチの神聖なる部分はブレーザーに倒されて天に還ったが、貶められて穢れた部分は、怨霊として残っていてもおかしくはないみたいな。
それでいて、生と死の狭間に存在する曖昧な存在であるから、実体ある姿と、実体なき姿を行き来できるというところは、高次元の存在らしく、非常に厄介というところが、解釈一致みたいところがあって嬉しくもあり。あと、人間の文化を洗い流すにしては、住宅地は襲っても、あまり市街地を襲撃しなかった怪獣なだけに、ビル街、高速道路を蹂躙するニジカガチという姿が観られたのは非常に嬉しかったです。
ザンギルだけでも、新たな武器を得たブレーザーだけでも、倒すことは容易ならざる相手として描かれてることもあり、ニジカガチの格を一切落とすことなく、更に厄介さを増した怪獣として描いてきたのは、拍手しかないですよね。クリスタルが破壊されてないニジカガチだったら、レインボー光輪さえこうなってたのか……みたいな。

雷は斬れても、霊体は斬れないチルソナイトソード。急に霊体化されて、刃をすり抜けられてしまい、喉元を刺されそうになったところをザンギルに救われるわけですが。チルソナイトソードに問題があると思ったのか、剣の刀身をコンコン叩いて確かめるブレーザーの仕草があまりに面白くて。
そのあと、刀身に、ザンギルの霊的なエネルギーを注いでもらって霊体になっても刃がすり抜けなくなるようになったら、飛び跳ねて喜ぶ様が、本当に宇宙の未開人という感じで笑いを抑えきれませんでした。

そこからの、ニジカガチの新技披露も相当アガリましたが、チルソナイトソードで上空に打ち上げたニジカガチに、ザンギルが先手で突撃。更に、ブレーザーのオーバーロード雷鳴斬で、天空で真っ二つは相当にかっこいい演出でした。
オーバーロード雷鳴斬、まだ武居監督しか演出してないから、別の監督の演出も観たい!って思ってたので、ここで辻本演出で観られたのは本当にご褒美でした。お陰で、もっと辻本演出に飢える羽目になるわけですが。もっとかっこいい辻本監督回の『ブレーザー』が見たいよぉぉぉ。

天空で真っ二つになったのに、怨霊だから死んでおらず、ザンギルを乗っ取って新しい肉体を得るニジカガチが怖すぎて、チビるかと思いました。ザンギルの持ってる結晶。霊石?の力を吸い取って新たな実体を得るに飽き足らず、ザンギルまで乗っ取ろうとは。いくら怨霊とはいえ、やりたい放題がすぎるぞ。ニジカガチよ。

何も知らず、「やったな!」みたいな態度で近づいていって急にザンギルにど突かれて慌てるブレーザーが、可愛すぎて。あまりの急のことであるのに、ザンギルそのものは味方として認識しているからか、チルソナイトソードをザンギルの剣を受けるだけに使い、自ら振るおうとしないところは、命を大事にするブレーザーらしくもあり、ゲント隊長らしくもあったなって。
しかし、さっきまでニジカガチを相手に共闘してたと思ってたブレーザーと謎の宇宙人が、急に戦いだしたら困惑しますよね。「急に戦い出した!?もう、どうなってんねん!」と愚痴るヤスノブ隊員の気持ち、強くよく分かります。アースガロンの援護が入りだす前後辺りから、ブレーザーも自らの命の危険を感じてか、チルソナイトソードを振るうようになるのですが、峰で撃ってるのが細かいです。

テルアキ副隊長の支持のもと、アースガロンが加勢に加わるのですが、一切歯が立たず。それどころかザンギル(ニジカガチ?)は、道路に剣の切っ先を擦らせて、飛び散る火花で刀身の発火させて、炎をまとう斬撃でアースガロンを撃退してしまいます。怨霊になってからのニジカガチ。凶暴性が増した感じがありますね。

仲間の危機を前に、イナズマスラッシュを発動させるブレーザー。でも、ゲバルガ戦の殺傷力高めの三連撃ではなく、一撃だったのを思うと、やはり相手がザンギルだから加減している感じでしょうか。それとも、ザンギルが三連撃すべて一撃で落としたのか!?ブレーザーが本気出せない中、ザンギルは手加減なし。ブレーザーのザンギルの剣が直撃したときの効果音が非常に生々しく、ちょっと怖かったです。

斬られた反動で後ろに後ずさるも、そこから構えを取り直し、互いに互いに向けて走り出すブレーザーとザンギル。ザンギルの剣を潜って回避し、それと同時にチルソナイトソードを返して、がら空きになったザンギルの中段に峰打ちを叩き込むブレーザー!最近、剣を手に入れたばかりのブレーザーの芸当とも思えないものの、これはゲント隊長の技なのか?
そういえば、ザンギルの口調についての物言いの際に、「時代劇は好きだけど……」と漏らしてたので、時代劇からの見様見真似の一撃だったのかもですが、ぶつけ本番でこれが出来てしまうとしたら、凄いんじゃないかと。

峰打ちを叩き込まれ、仮死状態になったザンギルから、逃げ出すように体から抜け出すニジカガチの怨霊。そのまま実体化するかと思いきや、ブレーザーと、仮死状態から目覚めたザンギルの剣を受け、大爆発。ニジカガチの怨霊は退治されました、とさ。お騒がせな怨霊も、こうなってしまうと呆気ないですね。今度はちゃんと還れるとよいのですが。
しかし、地球の自然のために、いろいろなものを犠牲にして目覚めさせたニジカガチが怨霊になって街を襲ったとか、自分の過ちを知った横峯教授が、今回の一件を知ったらどうなるんだろうか。ちょっと気になります。

ブレーザーに斬られたのに、突然目覚めだしたザンギルに驚くヤスノブ隊員に対し、斬ったのではなく、刃の背の部分で打つ峰打ちを行って仮死状態にしたことを教えるアーくん。アースガロンから接続できる防衛隊のクラウド内の文化アーカイブに、時代劇が入ってるとか、防衛隊にもなかなかの趣味人がいらっしゃるようだ。でなければ、防衛隊のクラウドに時代劇が入ってるとは思えないもの。でも、文化アーカイブ……。怪獣の調査とかに使われるんでしょうか?
それにしても、峰打ちなんて知ってるアーくんに、「すごいよアーくん」とデレデレなヤスノブ隊員。最初のお喋りはエミ隊員に取られちゃったけど、なんかかんだでアーくんとやりとりできて、よかったね。

そして、戦いのあとは先程の喫茶店。108体の成仏できぬ怨霊を鎮める使命を終えたザンギル。「これからどうする?宇宙に変えるのか?」とゲント隊長が尋ねると、驚く言葉が帰ってきた。「拙者にこれからは……ない!」 ザンギルもまた、彼が鎮めてきた怪獣の怨霊同様に、彷徨う魂であり、例の達人から貰った霊石のお陰で、実体を保っていたとのこと。
元々ザンギルも、強き者を倒すことに悦びを得る快楽で人斬りをするタイプだったみたいだが、多分どこかの星で強き者との戦いの果てに死んだんでしょうね。それも、未練を残して。死して尚も、怪獣墓場で戦い、その戦いの中で、剣の達人と斬り結んだ結果敗北。そして、剣の達人に託された使命によって、僅かながら再びの命を得て、鎮魂の旅に出たといった感じなのかな、と。そして、108体倒したところで、その旅も終わりを告げると……

「思えば、この長い年月、常に独りじゃった……。が、最後にお主たちと共に戦えたこと、誇りに思う」と、告げるザンギルに対し、「俺はゲント。ヒルマ ゲントだ。彼は、ウルトラマンブレーザー」と、穏やかなながらもどこか寂しそうに伝えるゲント隊長。防衛隊所属の人間として、素性の分からない宇宙人に名乗ることは出来ないとして、名乗ることを断った先程とは違い、あの世に還る彼の誇りに応えたがゆえの名乗りなのでしょうね。
ゲント隊長が自分の胸に手を当て、「彼は、ウルトラマンブレーザー」と伝えるところ。自分の中にいる何かに不安を感じていたあの頃と違い、穏やかな表情でそれを伝えるのが、ゲントとブレーザーとの関係もあの頃と変わってきているのが見て取れていいですね。

「ありがとう、ゲント殿。ブレーザー殿」 最後に彼らに礼の言葉を伝えると、光となって消えるザンギル。そんなザンギルに、名残を感じてか、「コーヒーがまだだぞ」とゲント隊長が伝えると、「それだけが唯一、心残りじゃのう……」と、心寂しくもどこか穏やかな表情で消えていった。
それにしても、「コーヒーがまだだぞ」って台詞。レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』で有名な「ギムレットには早すぎるね」に通ずる名文句ですよね。ゲント隊長が、共に戦ったザンギルとの別れを惜しむにあたって、こんなにも趣があって、苦味のある台詞が出てこようとは。コーヒーを飲み終えるひとときだけでも、共に過ごせたらよかったのに……。別れというのはいつも唐突なものです。

そして、コーヒーを持ってきた喫茶店の女性主人が、「あら、お連れ様は?」と尋ねると、ゲント隊長は「彼は、先にかえりました」と寂しそうな顔で伝える。困ってしまう女主人だったが、そんな彼女に、「大丈夫です。いただきます」と伝え、テーブルに二人分のコーヒーと、サービスのコーヒーゼリーを置いてもらうことに。二人分、ゲント隊長の席に寄せるのではなく、ザンギルの席と、ゲント隊長の席にひとつずつ、置かれるところが非常に趣が深いです……。あと、テーブルに力を失った霊石だけ残ってるのがなんとも。

ラストカットは、彼が好きだったコーヒーをもって、ささやかに献杯するゲント隊長。戦士として、誇り高き侍への鎮魂。宇宙の規模で考えたら、星が瞬く間の出来事なんでしょうけれども、そんなささやかな時の間でも、2人の間に確かな友情があったことを感じさせます。
ブレーザー17話…喫茶店の女性主人は『帰ってきたウルトラマン』の16&17話・怪鳥テロチルス回のヒロイン小野由起子を演じた服部妙子さんです。
— 辻本 貴則 / Takanori Tsujimoto (@TakaTsujimo) November 12, 2023
帰りマンの放送は1971年。
私が生まれた年でもある。
もうすごいぞヤバいぞウルトラの歴史!#ウルトラマンブレーザー #ウルトラマンオーブ21話でもご出演 pic.twitter.com/M2e3Zlz5sv
それにしても、あの女性主人。ずっと懐かしさみたいなものを感じていたわけですが、『帰ってきたウルトラマン』のテロチルス回の前後編で、ヒロインを演じておられた服部妙子様だったとは。ちなみに、『ウルトラマンオーブ』第21話「青いリボンの少女」で、マーヤを保護した老夫婦の婦人役でも出演されておりましたね。ああいう優しい雰囲気の女性主人のいる純喫茶行ってみたいですね。最近、そういうところなかなか無いけれど。
それはそれとして、辻本監督本当にお疲れ様でした!次回作(あるのかな?)でも、熱くて、キレがよくて、シビれる演出、頼みます!
■宇宙侍 ザンギル

モグージョンに続く、辻本監督デザインの怪獣・宇宙人の第2弾。あれだけ巧みな演出も出来て、尚且つ宇宙人のデザインとかも出来ちゃうってホント多彩ですよね。宇宙侍という二つ名から思いついて、そこからイメージを膨らませていったようですが。敢えて侍感あるデザインではなく、日本刀、刀剣の方をモチーフとしてデザインされているのが非常に面白いです。侍感あるヤツは、宇宙剣豪ザムシャーがホント完成形というか、あれ以上の宇宙の侍作るの難しくない?みたいなところありますから、発想の勝利ですよね。
最初デザイン見たとき絶対悪い宇宙人だよ!それも、リフレクト星人みたいな慇懃無礼な口調で喋るヤツ!だと思ってたんで、侍ゆえに礼儀を重んじる、ちょっと堅苦しい感じのキャラクターで出てきたときにはだいぶ驚きました。名の由来は、侍だけに散切り頭かなあとか思ったんですが、ザンギルの本態にせよ、人間態にせよ、散切り頭ではないので、”斬”と”切る”でザンギルなんでしょうね。

そして、そんなザンギルの人間態を演じるのは我らが、唐橋充さん。仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン。3大特撮シリーズ出演を制覇されている俳優さんでは御座いますが、その3大特撮すべてで侍役として出演されているのは、唐橋さんのみという。というか、3大特撮すべてで侍役を演じてるって一体?と思わないでもなくですが。でも、凄い偉業ですよね。3大特撮すべてでヒーローになる以上に、難易度が高そうです。

地球の文化を学び、日本の侍文化に惚れ込んだ侍かぶれというか、ちょっとズレてる侍感は、過去に唐橋さんが演じたどの侍とも違っててよかったと思います。あと、敢えて日本茶ではなく、コーヒーが好物というところもズレててよかったです。「おいしくなーれ」とか、どこで覚えた……

宇宙侍の姿にならず、人間体のままでも手を剣に変えて振るうことができるだけでなく、空を飛んだりも可能。更には、ゲント隊長を空に投げ飛ばすほどの怪力も披露。その怪力があれば、ゲント隊長を担いで飛ぶことも出来ただろうに、敢えて助太刀を求めた相手を投げ飛ばすとはだいぶ無茶苦茶な男である。空中を舞うゲント隊長がSKaRDに、アースガロンを出撃させろと指示するところだいぶ腹筋に悪かったです。でも、よくあの状態から怪我一つなく着地できたもので。

かつての(生前の?)ザンギルは、命知らずで、強敵を倒すことに悦びを感じる性格だったとのことで、それこそ一歩間違えれば、かつて唐橋さんが『侍戦隊シンケンジャー』で演じた腑破十臓みたいな外道に堕ちていた可能性もあったんでしょうね。それこそ、強き者にこだわらず、人を斬ることに快楽を感じるタイプだったら、『ウルトラマンレオ』の序盤に登場する人殺しだけを目的として街に蔓延る通り魔宇宙人らみたいになっていたかも。それも手を剣に変えて戦うスタイルといい、ツルク星人みたいになっていた可能性もありますね。剣の使い手でも、そこまで堕ちるタイプではなかったのが、救いか。

そんな彼を打ちのめし、彼に使命を与えた謎の剣の達人。どう見ても、宇宙剣豪ザムシャーなわけですが、首から下しか映ってないため、本当にザムシャーだったかは分かりません。ザムシャーも1体だけでなく、別個体いるしね。
だけど、2人のウルトラマンとの戦いを経て、”守る”ことの意味を理解して、強敵の前に果てた彼が、死後の世界で迷える魂に使命を与えて救済する”導きの人”になっていたら、いいなあとか思うわけですが。怪獣墓場なら、スペースを超越していてもなんら不思議ではない場所ですし。
今回のサブタイトルである、「さすらいのザンギル」というサブタイトルは、『ウルトラマンメビウス』のサブタイトル同様に、「◯◯の◯◯」というかたちにもなってますし、本当にかつてのザムシャーのその後の話だったらいいなあ、と。完全にオタクの妄想の域を出ないヤツですが。

実体の攻撃をすり抜ける怪獣の怨霊に対し、彼の攻撃が効いていたのは彼の自身も彷徨える魂だったからなのか、剣の達人に託された霊石の効果だったかはさだかではありません。彼の剣だけが、彷徨える魂を浄化できるがため、浄化する力を剣同士打ち合うことで分け当たることができるというのもかっこよかったです。剣をコンコンやってるブレーザーに、マジに斬り掛かってきたときには、「ヒエッ!?」と思いましたが。これであらゆるものを貫くチルソナイトの刃が、霊的なものまで斬れるようになったのが頼もしいですね。

108体の彷徨える魂を鎮める前に、霊石の力が切れていたら彼もどうなっていたのか。それは分かりませんが、明らかに霊石の力が弱まっているであろう描写があったので、霊石が完全に力を失う前に、108体の魂を鎮められたのは本当によかったと思います。とはいえ、1杯のコーヒーを飲み終える時間くらいは与えてあげてほしかったですね。
■天弓怪獣 ニジカガチ(怨霊態)

帰ってきたニジカガチ。まさかニジカガチほどの怪獣が再登場するとは夢にも思いませんでしたが、元より高次元の存在というか、霊的な存在だったものが、人間の強い情念や、感情によって召喚された結果、”怪獣”に貶められた存在だと思っているので、こういう登場もありなのかなって。
神性な部分は天に還り、虹となったが、穢れた部分は、ある種の残留思念として、すべてを奪い去る強い怒りを抱いたまま地上に残っていて、それをザンギルが鎮めようとしたものの、彼の持つ霊石の力を吸って、新たな肉体を得るに至ったみたいな。

横峯教授のことを思うと、あまり再登場はしてほしくない怪獣ではあったんですが、今回のお話として、ブレーザーとザンギルの2人がかりで挑まなければならないほどの強敵にして、この世のすべてを飲み込まんとするおぞましい念の強さを持つ怪獣ともなれば、相当の怪獣の念でなければならないと思うと、別次元の強さを誇ったニジカガチ以外に適任がいないんですよね。それでいて、剣を携えているがゆえに、侍との斬り合いも可能。ともなれば、これ以上ない人選というか。
生前のニジカガチはあまり尻尾の剣を使ってこなかったので、今回剣を多用してきたのは嬉しかった反面、あまり虹光線を使わなくなったのは、神性な部分が抜け落ちているからでしょうか。攻撃パターンもだいぶ変わってましたし。今回は出現以降、鎧も開いたままでしたしね。

やはりニジカガチは、嵐渦巻く自然の中を歩く姿のほうが似合う訳ですが、ビル街を襲撃し、高速道路を寸断させるという人の文明を破壊する様もなかなか。建設業の辻本組のトラックが巻き込まれていたのは可哀想でしたが。ゲント隊長のよき判断のお陰で、道路から落ちる寸前の本当のギリギリところを救われて本当によかったです。「あ、ウルトラマン……」という運転手の助かったときのちょっとホッとしたような声といい、「ありがとう!」と大声で言って去っていく様といい、ヒーローによって人が救われる描写はほっとしますね。あの運転手、もしかして辻本監督?

それはそれとして、額のクリスタルが無事ということもあってか、レインボー光輪を止める手段が今回はあるため、いきなりレインボー光輪を虹光線で打ち砕いていたのが衝撃でした。「レインボー光輪を克服してる!?」と、弱点だったスペシウム光線を克服して、スペルゲン反射光で撃ち返してくるバルタン星人を初めて見たとの気分でした。

とはいえ、あのときにはなかった武器がブレーザーにもあるので、チルソナイトソードによるオーバーロード雷鳴斬で再度真っ二つにされる様は痛快でした。やはりニジカガチは真っ二つにされる宿命か……なんて思ってたら、怨霊だけにまだ倒されておらず、ザンギルを乗っ取って、ブレーザーや、アースガロンに刃を向けてきたのは非常に厄介でした。そのあと、ブレーザーとザンギルの連携を持って倒されましたが。
それにしても、怨霊となったニジカガチの件で、テルアキ副隊長に真理を説かれ、自分が間違っていることを思い知った横峯教授が嘆いてないといいのですが。
■次回予告
地下より突き出た異形・汚染獣イルーゴ。その口から吐き出されたガスが、街や人を蝕んでゆく。司令部からイルーゴの調査を止められ、待機を命じられたSKaRD。エミはサード・ウェイブの可能性があると考え、第66実験施設とともに独自に調査を進める。一方、防衛隊は自走レーザー砲でイルーゴを切断する作戦に出る。
次回、ウルトラマンブレーザー 第18話「そびえ立つ恐怖」。汚染獣イルーゴ。上顎にも、下顎にも目があって、口の中に、また口がある。この異形が、とても地球産怪獣だとは思えないので、やはり宇宙怪獣だと思うのですが。地下から突き出てる部分だけがすべてではない気がするだけに、まだ下に本体があったりするんでしょうか。ちょっと怖いです。
©円谷プロ
©ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京
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